どうしても見たい美術展2つを見に東京に行くことにした私。バッチリ予習もして、ついに先日行ってまいりました!
今回は2日目に行った「ミロ展」の現地レポートを、感想を交えながらお伝えいたします!
※決して美術への造詣が深いわけではない私の、ごく個人的な感想であることをご了承の上ご覧いただければ幸いです。
ちなみに事前に予習した情報はこちら!
1日目に行った「西洋絵画、どこから見るか?」展の現地レポートはこちら!
「ミロ展」現地レポート
さていよいよ待ちに待ったミロ展に突入です!
音声ガイドはもちろん利用。私は美術館に行って、音声ガイドを利用しないことはありません。ちなみにナビゲーターは三代目 J SOUL BROTHERSの岩田剛典さんでした。3月6日生まれの36歳→36(ミロ)だから…ってそんな理由!?とちょっと笑いました。
第1章 〜1920年ごろまで
展示室に入るとまず、大きな壁一面に貼られたミロの写真がお出迎えしてくれました。写真もたくさん残っているのですね。
その写真のちょうど正面に1枚目の作品「自画像」がありました。ミロがパリに出てピカソを訪問した際にアピールした作品。キュビズム的な手法で描かれていますが、正面の壁の写真と見比べてみると、たしかに似ている気がします!この絵は最終的にはピカソの手に渡り、生涯手放さなかったそうです。
音声ガイド曰く、ミロがピカソに「今、あなたと同じような絵を描いています」と言ったのに対してピカソが「そうだろう。私たちは同じ地区に住んでいる。」と応えたとか。後に図録で知りましたが、2人の実家は500メートルほどしか離れておらず、なんと母親同士は知り合いだったそう。
実際にご近所さんだった2人ですが、ピカソが言った「同じ地区」というのは「同じ芸術的な感性や価値観」などの意味でしょう。ミロはこのピカソの言葉をずっと大切に心にとどめていたそうです。ピカソへの尊敬の念や、ミロの誠実な人柄が感じられる素敵なエピソードだと思いました。
第1章には初期の作品が並んでいます。作品番号は年代順につけられているのですが、必ずしもその順番通りに並んでいるわけではありませんでした(最初の自画像は作品番号11)。
初期の作品は私のイメージするミロの作品とは違い、故郷モンロッチの風景や静物画なども描いていたようです。印象派のような筆跡が残る荒いタッチで描かれていたり、太い黒線でしっかりと輪郭線をとって描いていたり。「こんな作風の時代もあったのか!」とミロの新しい一面を知りました。
第2章 1920年代の作品が中心
この章に入ると、私のイメージするミロらしい抽象的なモチーフが登場してきました。写真撮影はできないのでポストカードですが、例えばこれ。

「パストラル(Pastoral)」という作品。「牧歌的な」「田園風景を描いた」というような意味です。真ん中にいるのは…牛?でしょうか。描いているのは第1章に続き農村ですが、モチーフはデフォルメされて描き方が大きく変わりました。そして左上にはアルファベットが描かれています。
ミロの絵には度々、まるでデザインの一部のように文字が描かれています。

ミロは「絵画=詩」というタイトルの連作を制作しています。シュルレアリスムの作家や詩人の仲間たちの影響で、ミロにとって詩は身近なものだったようです。
「絵画=詩」を具現化しようという試みは興味深いです。単なる本の挿絵のような、文章に絵を添える、あるいはその逆、というのとは全く違う気がします。なにせ絵画と詩は「=(イコール)」なのですから。
1920年代の後半になると、早くもミロは既存の絵画へ批判的な目を向け新たな表現を模索するようになります。仲間内で「絵画を暗殺したい」と漏らしていたとか。
第3章 1930年代〜40年代中頃
第3章のタイトルは「逃避と詩情 戦争の時代を背景に」。スペイン内戦や第二次世界大戦の時期にあたる作品です。コラージュやオブジェなど絵画以外の作品や、絵画に砂やタールといった素材を使うなど、表現方法を模索する中で内線が勃発し、作品にも大きく影響を与えたことがみてとれます。
私が楽しみにしていた「星座」シリーズもこの章にありました。ミロ展の見どころのひとつとして打ち出されているだけあって、この3点だけが展示されている部屋(仕切られたスペース)が設けられていました。

事前情報で知ってはいたのですが、実際に作品を見ていると想像以上に小さい。38×46㎝、A3よりいくらか大きい程度の紙に、グワッシュ(不透明水彩絵具)で描かれています。
時代背景を知らずに見ていたらきっと、ただただ「キレイ」「かわいい」と思って見ていたかもしれません。しかし戦争の最中に描かれたことを知ると、今までとは違って見えてきます。
描かれている人や生き物は恐ろしい、怯えた、苦しそうな表情にも見えてきます。どことなくピカソの「ゲルニカ」に似たものを感じます。
その小ささにもかかわらずその向こうに壮大な宇宙を感じるような、幻想的でスケール感のある作品。広くて暗い宇宙で不安や恐怖と戦いながら、一方で小さな星の光に心惹かれ、希望を感じているような。寂しい、怖い、けれど美しい。あくまで私個人の感想ですが、そんな印象を受けました。
3枚の絵が展示されている正面の壁に描かれたミロの言葉が印象的でした。
《星座》を描いている間、本当に密かに作業をしているという感覚がありましたが、
それは私にとって解放でもありました。
周囲の悲劇について考えることをやめることができたのです。
ミロは目の前の恐ろしい現実から目を背け、逃れるように星座を描いていたのかと思うと、胸が締めつけられるような気持ちになります。
ちなみにこの3作品、どれも美しくて見入ってしまったのですが、中でも写真中央の「明けの明星」が私のお気に入りになりました。
写真や印刷だとよく分からないのですが、実際の絵を見ると背景の色は淡く透明感があって、タイトル通り「明け方」のような明るさを感じるのです。
暗い夜が明けて、恐ろしい怪物たちは明るくなる空に背を向けて逃げるように去っていく。空には星が、一筋の希望のように光っている。そんなストーリーなのかは分かりませんが、そうだったらいいなと勝手に思っています。
星座シリーズの感想ばかりになりましたが、第3章には他にもたくさんの作品があります!第二次世界大戦が終わった頃からは、明るい表現も増えてきます。
第4章 1940年代後半〜60年代 日本の影響を受けた作品も
この章に入るとサイズの大きい作品が増えてきます。なぜならミロは1956年に、自身のアトリエを持ったからです。
そして嬉しいことに、この章の途中から写真撮影OKになっていました!


ミロはポスターデザインなども手掛けていたのですね。
個人的に気に入ったというか、嬉しくなった作品はこちら。

タイトルは「ダイヤモンドで飾られた草原に眠るヒナゲシの雌しべへと舞い戻った、金色の青に包まれたヒバリの翼」
いや長い!そして正直よく分からない…!(ゴメンナサイ)
でもこのタイトル実は、日本の「俳句」に通じるものなのだそう。タイトルとしては長いですが、詩としては短い。物語や感情というより、とある情景を切り取るような表現は確かに俳句っぽい。
そういえば第2章でミロは「絵画=詩」の具現化を試みていました。俳句も詩の一種ですから、詩を表現しようとしたのと同じように「絵画=俳句」を表現しようとしたのかもしれませんね。
この作品が描かれた前年の1966年、ミロは日本での大回顧展に出席するために初来日しており、その経験は大きな影響を与えたそうです。
実はそれよりはるか昔、20代の頃から日本に興味を抱いていて「日本人の、水滴、小石、一握りの砂、そういった些細なものに注ぐ愛情に感銘を受けている」と述べています。日本そんなふうに思っていてくれたなんて、嬉しいし日本人として誇らしいですよね!
第5章 晩年まで新しい芸術に挑戦し続けたミロ
ついに最終章に来てしまいました。第4〜5章は絵画だけでなく、ブロンズの像や陶器、身近にあるものを多数組み合わせたオブジェなども展示されていました。

こちらは予習でも出てきた「焼かれたカンヴァス2」。投機的になっていく商品としての絵画に反発してのこととも言っていますが、晩年まで新しい表現を模索していたのですね。

裏側まで芸術的です。「破壊」して完成する作品、壊すところまで芸術というのは、なんだか現代的だなぁなんて感じます。
そして印象に残った作品をもう1点。最後の展示作品だったこちらの絵です。

タイトルは「涙の微笑」。1973年の作品ですが、構想を練り始めたのはなんと1967年から。一見簡素に見えますが、長い年月をかけて制作されたのですね。
地平線を挟んだ画面の上と下でコントラストが際立っています。タイトルも「涙の微笑」と相反する2つの要素が並んでいますが、その両方が私にもちゃんと感じられるのが不思議です。
地上に立っているしずく状のものは、女性でしょうか(ここまでの絵でも、女性には3本の髪の毛がありました)。空を見上げて祈っているようにも、手の届かない遥か遠くの月や星に憧れと虚しさを感じているようにも見えます。月からは細かな雫が降り注いでいて、大地を潤し、女性を優しくなぐさめているように思えてきます。
きれいな、ちょっと寂しい、でも優しい気持ちになる絵でした。展覧会の最後にふさわしい作品だと思います。
グッズ紹介
作品を見終わった後の充実感で、ついつい欲しくなってしまうグッズ。今回は図録、思い切って買ってしまいました!!

図録は表紙違いで3種類。私は青&明けの明星がメインビジュアルになっているものを購入。
いつも「この作品、感動、絶対に忘れないぞ」という気持ちで作品を目に焼きつけるのですが、私の頭ではどうしても覚えてはおけません…。
これがあれば何回でも思い出せる!
素直に、買ってよかったです。
他にポストカードのほか、「涙の微笑」のマグネットも買いました!

欲しいものは他にもたくさん…ほんとにたくさんありましたが、今年に入って毎月収支マイナスの生活の私は泣く泣く断念しました。Tシャツとか、明けの明星バンダナとか、ノートとかピンバッジとかかわいかった…欲しかった…(泣)
「ミロ展」感想 作品を通してミロという人物を知ることができる!
100点近い作品、その全てがミロという圧巻の展覧会でした。こんなにたくさんのミロの作品を見られる機会、生涯ないかもしれません。
今回、私にしてはめずらしく予習した上で行ったのですが、事前に調べて本当によかったです。予備知識&音声ガイドの情報があることによって作品の見え方が変わる、理解が深まることを実感しました。
そして作品を通して、ミロという人物の人柄や内面が少し分かった気がします。これは私の勝手な想像ですが、きっとミロは繊細で感受性が豊かで思慮深い人。多くは語らず、自分の感じた全てを作品で表現しようとした人なのではないかなと感じました。
何度も言いますがこんなにたくさんのミロの作品、次に見られるのはいつになるか分かりません!開催は7月6日まで、巡回の予定もないようです。大満足間違いなしの展覧会なので、ぜひこの機会に「ミロ展」訪れてみてください!
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